第25回 課題研究成果発表会

公益財団法人軽金属奨学会
第25回

課題研究成果発表会

開催日
2022年7月6日(水)
「第25 回課題研究成果発表会」へ多数のご参加をいただき、誠に有難うございました。(出席者約90名)
おかげさまで盛況に開催することができました。
今回は、会場とオンラインのハイブリッド開催と致しました。

プログラム

ご挨拶

今須 聖雄

(公益財団法人 軽金属奨学会 理事長、東洋アルミニウム株式会社 取締役相談役)

祝辞

松野 大輔 様

(経済産業省 製造産業局 金属課長)

(1)発泡中のソフトプレス加工による発泡アルミニウムの形状付与

半谷 禎彦 様

(群馬大学 大学院理工学府 知能機械創製部門 教授)

司会:佐藤 英一 公益財団法人軽金属奨学会 理事

(2)転位強化と析出強化を両立したアルミニウム合金の高強度化とプロセスとマイクロメカニクス解析

村石 信二 様

(東京工業大学 物質理工学院・材料系 准教授)

司会:本保 元次郎 公益財団法人軽金属奨学会 理事

(3)耐用温度300℃を実現する鋳造アルミニウム基超合金の設計と組織形態制御

高田 尚記 様

(名古屋大学 大学院工学系研究科 物質プロセス工学専攻 准教授)

司会:堀田 善治 公益財団法人軽金属奨学会 理事

(4)レーザ積層造形法による金属間化合物分散型耐熱アルミニウム合金の創製

木村 貴広 様

(大阪産業技術研究所 加工成形研究部 主任研究員)

司会:辻 伸泰 公益財団法人軽金属奨学会 理事

総括

宇都宮 裕

(公益財団法人 軽金属奨学会 理事)

閉会挨拶

浅田 淑

(公益財団法人 軽金属奨学会 専務理事)

研究テーマの今後の思い
半谷 禎彦
(群馬大学 大学院理工学府 知能機械創製部門 教授)

電気炉でプリカーサを発泡させ,それを取り出している最中に誤って壊してしまったり早く冷却するために風をあて変形させてしまったり,ということが良くあった。そのような悩みを抱えている中,学内の先生から光加熱を教えて頂いた。電気炉に比べ,発泡の様子の観察や,温度計測が非常に簡単で,私の中で発泡時の悩みが一つ解決された。そして光加熱が良かったことは,電気炉と違い発泡中,加熱しながらアルミニウムをつついたり,わざと崩壊させたり,様々なタイミングで色々ないたずらができることであった。そのようないたずらから,思った以上に乱暴に扱っても崩壊しないものだと妙に納得したものを覚えている。通常の金属のように,プレス加工や圧延が発泡アルミニウムでもできればと常々思っていたが,この課題研究を実施させていただき,普段ではやらないような実験も試みることができた。どうもありがとうございました。
村石 信二
(東京工業大学 物質理工学院・材料系 准教授)

材料の強化メカニズムの研究には長い歴史があるが,今回のように転位強化と析出強化が複合的に作用する場合の予測式はない。マイクロメカニクスの理論に従って厳密に内部応力を計算し,転位の動きを観察するなど,析出バリアントの強度レベルの違いを議論することは可能となった。それでも析出物の寸法効果,転位同士の切り合い,多体問題など検討したい項目は山積み状態で,材料強度の予測式を簡便な形で表現することは少し先の話である。また,微細な析出物の弾性率や単結晶的な応力ひずみ線図などの材料データも不足しており,今回紹介しきれなかった第一原理計算の数値解析やマイクロピラーなどの実験的検討も今後必要となるであろう。実験も数値解析も,これが最適解と言えるような条件を見つける為には周辺データの蓄積が必要となり,この点,長時間にわたって時効硬化の実験と解析プログラムの開発に貢献してくれた学生諸氏には頭の下がる思いである。
高田 尚記
(名古屋大学 大学院工学系研究科 物質プロセス工学専攻 准教授)

本課題研究の着想は,これまで多くの耐熱材料を研究対象としてきた著者がアルミニウム合金の組織を観察したときに感じた「(今まで自分が組織解析してきた)耐熱材料の組織形態をAl合金で再現できれば,融点の6割以上の温度域(およそ300℃)に耐用できる耐熱Al合金を創製できるのではないか?」に由来する。至極単純な発想ではあるが,本課題研究を通じて,50%以上の高体積率を有する熱力学的に安定な金属間化合物相(α-Al母相と平衡する)を用いた強化原理の可能性は見出せた。一方,設計合金の乏しい室温延性などの問題点も露わとなった。将来的には,本研究課題で提示した鋳造プロセスだけでなく他の製造プロセス(鍛造,粉末冶金,積層造形等)も念頭に置き,高温強度,室温靭性,製造性を兼ね備えた新たな耐熱Al合金の設計原理を,製造プロセスと併せて構築していく必要があると考えている。
木村 貴広
(大阪産業技術研究所 加工成形研究部 主任研究員)

本研究では,レーザ積層造形法の特長を活かし,高温部材に適用可能な積層造形用耐熱アルミニウム合金を開発した。今後,開発粉末の製品化と実部品への応用を目指し,企業と共同で実用化に向けた技術開発を進めていく。
最近,アルミニウム合金粉末を用いたAM造形体を航空機の構造部材,装置用のヒートシンク,自動車の連結部品などに応用した事例が報告されているが,対象は一部の特殊な用途に限定されている。本技術が汎用的な工法として普及するためには,既存の鋳造材や展伸材と同様に,各種の要求機能を満足し得る多様な積層造形用アルミニウム合金の開発が求められる。それには,金属AMの特徴を踏まえた材料開発が肝要となる。著者が所属する大阪産業技術研究所では3D造形技術イノベーションセンターを立ち上げ,各種金属AMプロセスの熱履歴を考慮した積層造形用アルミニウム合金の開発に取り組んでいる。今後もそれらの研究開発を通じて,アルミニウム合金粉末を用いたAM技術の発展に貢献していく所存である。